萬翠荘は、1922（大正11）年に建てられた、フランス風の洋館です。旧松山藩主の子孫である久松定謨（さだこと）伯爵が別邸として建てました。設計者は、愛媛県庁舎を手がけた木子七郎（きご しちろう）です。伯爵は、シャルル・ド・ゴールを輩出したフランスのサンシール陸軍士官学校に留学していたため、フランスに対して深い思い入れがあったようです。木子はその気持ちを汲み取り、海外視察をし、最高級の材料をそろえ、ヨーロッパの人も驚くほどのフランス風建築を完成させました。萬翠荘は、松山初の鉄筋コンクリート製の建物でもあります。また、「松山の迎賓館」という別名がある通り、皇族方も訪れる社交の場でもありました。伊予鉄道市内電車「大街道」電停から徒歩5分、と町の中心部にありますが、緑にあふれ、静けさが漂う空間です。萬翠荘のそばには、伯爵のフランス留学に同行した秋山好古（よしふる）と弟の真之（さねゆき）について学べる「坂の上の雲ミュージアム」があるので、あわせて訪れてみてください。